ブロック工事を考える |
我家の近くで工事中のこのお家は、傾斜地を切り土して建てたため、土留めの擁壁工事が
必要になりました。
通常、傾斜地で宅地造成を行った場合擁壁工事は上側の(被害を及ぼす側)土地所有者がやることになっていますが、周囲で造成した(掘り込んだ)のはこの家だけだったため自らで
やらなければなりませんでした。
切り土して建物を建ちあげる前に擁壁を作るであろうと思っていたのに切り土したところを
ベニヤで仮留めして建物の工事が先行してゆきました。
幸い地盤も良かったのか、夏のゲリラ豪雨もしのいで工事は進められることが出来ました。
建物を建ててから奥の擁壁をコンクリート製で作るのはポンプ車が入らないので困難です。
どうするんだろうとおもいつつ…今年に入って1月中旬、外構工事が始まりました。
コンクリートブロックは価格的にも工事的にも手軽なため多用されがちですが、本来 擁壁に補強コンクリートブロックを使うことは出来ません。 800㎜ピッチの配筋、手練りのコンクリート基礎…強度といえるにはあまりに簡単な工法です。
さらにいちばん高いところで10段積んでいます。20㎝弱土に埋まっていますので、現状高さ180㎝余りの擁壁ということになり、確認申請(工作物)が必要な2M以上の規定内ぎりぎりということです。
(ちなみに、見た目が同じもので「型枠コンクリートブロック造」と言う工法があり、擁壁として認定されていますが、配筋も違いますしポンプ車でコンクリートを流し込むといった点から見てもどちらかというと「鉄筋コンクリート造」に近い工法と言えます。)
擁壁の構造基準は「建築基準法施行令第142条」で定められています。
横浜市 まちづくり調整局 建築・宅地指導センター 市民便利帳の中の「がけ崩れの防災対策→がけ防災Q&A」の項の法令説明を参考にリンクを貼りました。
そこには「鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐らない材料を用いた構造と
すること。」とし、細かい規定が並べられていますがなかなかそれだけでは難解です。
サイトでは解説として最後に、 「また、これ以外の構造、コンクリートブロックや板柵等は、擁壁としての機能を持っていません。特にコンクリートブロックの擁壁は、大雨時に崩壊する事例が多く、危険です。」とあります。
このお家の場合 もし、災害等で崩壊するとしてもブロックは自身の方へ倒れるでしょう…なので近隣への影響はさほど被害が広まらないかに見えます。とはいえ境界ぎりぎりにある隣地の樹木や塀は影響を受けることでしょう。
樹木は生長し根が張ってくるとブロックでは耐え切れず、むくれてくるそうです。
それにしても、何も知らされないで生活を始めた住まい手の方の安全はどうなるのでしょう?
擁壁は一方向では済みません…結局四方をブロックの擁壁で造ることとなるようです。
道路側駐車スペースの横を擁壁工事中です。
こちらは擁壁でなく「壁」ですがたとえ「塀」と言う解釈でもブロックで12段積むことは出来ません。
こちらも「建築基準法施行令第62条の8」で定められています。
(「横浜市…(略)市民便利帳」の「ブロック塀を造る方に→ブロック塀の法律と規準」の項の法令説明を参考にリンクを貼りました。)
高さが2.2M以下とありますので、実際積めるのは10段積みまでということになります。
高くなればなるほど風圧を受けますし、阪神・淡路大震災でも多くのブロック塀が倒れました。
あと 話はちょっとそれてしまいますが、この第62条の8の中にもある、よくある法文で
「ただし、国土交通大臣が定める基準に従った 構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においてはこの限りでない。」というのがあります。
もしこの規定に沿った構造で出来ている壁なら「構造計算書」なり、認定の取れた工法なら「認定番号」なりがあるはずなので、逃げ道として使われないよう聞いてみることですね。
というわけで…
近くに建つこの家のそんな様々な懸念もあり今回改めて勉強し直してみたのですが…
法規どおり造らなかったといっても、必ず崩壊する訳ではないのです…難しいですね。
実際、周囲でもこれほどではないものの多少の事(法規外)はやっている工事はあるのす。
(具体的には補強コンクリートブロック積みで4段ぐらいの擁壁はあったりします。)
もちろん法規は守らなければならないもの。
ですが、全ての法規外を役所が1つ1つ対応して行くことは難しいでしょう。
結局…知らされていないこととしても最終的にはそういう方向へ選択した住まい手の責任だとおもうのです。 私はそうおもいます。
この家は とある ハウスメーカーのスタイリッシュなデザインで造られていますが、きっと このブロックの擁壁もモルタルで塗りこめられて、吹き付けタイル(吹き付け塗装)などで仕上げられてしまうでしょう。そうしたら もともと何の構造で造られたかもきれいに消去されてしまい、コーティングされたこの壁はスタイリッシュなデザインのお家とすっかり馴染むことが出来るのではないでしょうか? そう思うと正直、ちょっと空しくなってしまうのです。
さて…
この「横浜市…(略)市民便利帳」のサイトでは様々な市民のトラブルに対応しています。
その件数の多さゆえ作られたサイトかも知れませんが横浜市の配慮が感じられるサイトだと思いました。 なんらかのトラブルにあった場合の助けになると思います、
よかったら参考になさってください。(横浜市のみに関する内容も含まれます)